大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)2683号 判決

一、記録編綴の登記簿謄本によれば、控訴人の理事長遠藤健吉は昭和二十九年八月三十日辞任し翌三十一日田崎勇三が理事長に就任し、いずれも同年十一月四日登記され、同年八月三十一日遠藤健吉が理事に就任し、同年十一月九日その登記がなされている。なお理事長又は理事の代表権を制限する趣旨の登記はなく、控訴人の寄附行為(乙第十号証)にも理事長又は理事の代表権を制限する規定はない。なお右寄附行為によれば、控訴人は私立学校法の定めるところにより設立された学校法人であるものと認められる。以上の事実によつて考えるに、控訴法人に適用される私立学校法第三十七条第一項の規定によれば、理事はすべて学校法人の業務について学校法人を代表するものであり、その代表権は寄附行為をもつてこれを制限することができるけれども、控訴人の寄附行為にはかような制限規定のないことは前示のとおりである。なお同法第三十五条第二項の規定によれば理事のうち一人は寄附行為の定めるところにより理事長となることが定められているが、理事長の代表権についても特別の定めはないから、学校法人の理事は理事長でない者もすべて同法及び寄附行為の定めるところに従い各自学校法人を代表するものと解すべきである。

二、控訴人は、右各小切手は他人に対する融資のため振出されたもので、そのようなことは学校法人である控訴人の目的の範囲外のことであるから、右振出は無効であると抗弁する。控訴人が私立学校法により設立された学校法人であることは前示のとおりであり、成立に争のない乙第十号証によれば、控訴人の寄附行為に定められているその目的は普通教育及び専門教育を行うことであつて他人に対する単なる金融のようなことは寄附行為の定める目的の範囲外であることが明らかであるけれども、小切手の振出は金銭支払の手段に過ぎないからその原因関係から切離して小切手振出行為だけにつき独立にこれを法人の目的の範囲内に属するか否かを考えることはできず、もし本件小切手の振出が控訴人主張のように第三者に対する融資のためになされたものでその融資が控訴人の目的と全く無関係であるとすれば、かような融資に関する契約は控訴人の目的の範囲外の行為として無効であり、その支払手段として振出された本件小切手についても控訴人は原因関係における取引の相手方に対してはその支払の責がないことになるが、これは人的抗弁として考慮されるに止まり、小切手そのものは無効となることなく、これを転々取得した所持人は、振出人を害することを知つて取得した場合に限り振出人から右抗弁を以て対抗されるに過ぎない。

(川喜多 小沢 位野木)

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